マルクスの『共産党宣言』風に言えば、韓国の政治状況は「韓国を妖怪が徘徊している。“無党派”という妖怪が」ということのようだ。10月26日に実施されたソウル市長選は、無党派層が既成の政党、政治家に「ノー」を突き付け、野党統一候補で、無所属の朴元淳(パク・ウォンスン)候補が、与党、ハンナラ党の羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)候補を破り当選した。 当初は超接戦になるのではという予想もあったが、投票結果(開票率99.98%)では、朴候補が53.40%で羅候補の46.21%に7.19ポイントの差を付けた。 選挙結果は韓国の抱える問題を浮き彫りにした。 ソウルの25区中でハンナラ党の羅候補が優勢だったのは富裕層が多いといわれる江南3区(江南、松坡、瑞草)と龍山区の計4区だけだった。羅候補は瑞草区では60.12%と朴候補に20.51ポイント、江南区では61.33%と22.96ポイント、松坡区では51.12%で2.59ポイント、龍山区では51.82%で4ポイントそれぞれ朴候補をリードした。しかし、羅候補自身の国会議員選挙区である中区でも敗北したのをはじめ、残り21区すべてで敗北した。韓国では慶尚道と全羅道の葛藤をめぐる地域問題がよく指摘されるが、ソウル市の富裕4区とそれ以外の区という「江南」と「江北」の政治地図が鮮明になった選挙結果だった。江南3区の投票率は瑞草53.1%、江南49.7%、松坡50.2%と今回のソウル市長選での投票率48.6%より高く、保守・富裕層の危機意識を反映したが、この3区の有権者数は135万7575人で、ソウル市全体の837万5901人の16.2%に過ぎず、全体の劣勢は覆せなかった。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。