オリンパス上場維持が問う「市場は誰のものか」

執筆者:磯山友幸 2012年2月7日
タグ: 日本
エリア: アジア
上場維持で市場の信用が守れるのか(東証の斉藤惇社長)(c)時事
上場維持で市場の信用が守れるのか(東証の斉藤惇社長)(c)時事

「間違った判断だとか、意外だったとの声はあまり聞こえていませんね」  1月31日、定例の記者会見に臨んだ東京証券取引所の斉藤惇社長は、東証の自主規制法人が1月20日にオリンパス株の上場維持を決めたことについて質問されると、いつもながらの淡々とした口調でこう答えた。それが真実なのか、それとも斉藤氏の一流のおとぼけなのかは別として、東証と今の日本の証券市場が抱える問題を如実に示すひとコマだった。  実際、株式会社になって以降の東証の社長には、上場廃止を決める権限はない。営利企業である東証の利害得失が、企業の上場など市場の公正性を歪めることがないようにという判断から、東証から独立した自主規制法人がそれを行なうことになったためだ。その自主規制法人の理事長には元財務次官だった林正和氏が天下っており、むしろ規制当局である霞が関の影響力が大きい。

カテゴリ: 社会 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
磯山友幸(いそやまともゆき) 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト活動とともに、千葉商科大学教授も務める。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』 (PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間――大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP社)などがある。
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