「左右対立」から「上下対立」へ――フランス総選挙に見る大変動

執筆者:国末憲人 2012年6月25日
エリア: ヨーロッパ
「反EU」で支持を広げる右翼・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首(c)AFP=時事
「反EU」で支持を広げる右翼・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首(c)AFP=時事

 冷戦時代、人々の価値観を支配したのは「東西」の対立構造だった。冷戦崩壊から20年を経て、現在の社会に存在する主要な対立構造は「上下」だといえないだろうか。  対立の軸となるのは「グローバル化」だ。グローバル化を積極的に受け入れるか、拒否するか。その判断は、教育水準としばしば結びついている。先進国家で は「教養と知性と所得に恵まれ、合理的な判断が可能で、新たな挑戦を恐れない人々」と「教育にも仕事にも恵まれず、自分の置かれた環境に不満を抱きつつ、 今ある生活を失うことに脅える人々」の格差がますます顕著になりつつある。  6月10日と17日に投開票のあったフランス総選挙は、そのような時代の到来を感じさせる結果となった。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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