「李英鎬解任劇」の裏で進む北朝鮮の「経済改革路線」

執筆者:平井久志 2012年7月18日
エリア: アジア
昨年9月9日、建国63周年を記念した閲兵式で、金正日・正恩父子の間で敬礼する李英鎬氏 (C)AFP=時事
昨年9月9日、建国63周年を記念した閲兵式で、金正日・正恩父子の間で敬礼する李英鎬氏 (C)AFP=時事

 金正恩(キム・ジョンウン)第1書記がついに経済改革に踏み出すのではないかという原稿を書き終え、フォーサイト編集部に送った直後の16日朝に、北朝鮮軍部のトップで金正恩氏の最側近とされてきた李英鎬(リ・ヨンホ)総参謀長(党政治局常務委員)がすべての職務から解任されたというニュースが飛び込んできた。  朝鮮中央通信は「朝鮮、李英鎬をすべての職務から解任することを決定」というタイトルで、労働党中央委員会政治局会議が15日に開催され、政治局常務委員、政治局員、政治局員候補が参加した会議では組織問題が取り扱われたと報じた。そして「会議では李英鎬を身病関係で朝鮮労働党中央委政治局常務委員、政治局委員、党中央軍事委副委員長をはじめとするすべての職務から解任することを決定した」と報じた。  16日付労働新聞をチェックすると、こちらでは2面の左肩に「朝鮮労働党中央委員会政治局で」という見出しで報じられていた。ここでは「李英鎬同志」という呼称が使われていたが、朝鮮中央通信報道では「李英鎬」と呼び捨てになっていた。報道のチェックが厳しい北朝鮮で、朝鮮中央通信と労働新聞の表現がこのように食い違うことは珍しい。  党政治局会議のために軍総参謀長の職務が解任されたかどうかについては言及していないが、「すべての職務」としていることからこれも解任されたとみるのが妥当だろう。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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