インテリジェンス・ナウ

CIA長官が米国家情報長官に勝利した本当の理由

執筆者:春名幹男 2012年7月19日
エリア: 北米

 中東情勢を大きく左右するエジプトの動向。焦点は、イスラム原理主義勢力「ムスリム同胞団」出身としては初めて政権に就いたモルシ新大統領が宗教色の強い政策を実行するかどうか。だから、エジプトを訪問したクリントン米国務長官は、「軍と協力して民主制への移行を」と同大統領にイスラム色の強い政治への傾斜を警告したのである。
 だが、「アラブの春」が大きく展開した昨年2月当時、ジェームズ・クラッパー国家情報長官(DNI=71=)は議会証言で「ムスリム同胞団は雑多な運動体を包括し、大体において世俗的」と恐ろしく単純な失言をして、後に訂正した。リビア情勢でも「長期的にはカダフィ勢力の方が有利」と発言していた。
 実はこんなぶざまな事態に至る舞台裏で、オバマ政権のDNIと米中央情報局(CIA)長官が激しい権力闘争を繰り広げ、その結果、CIA長官が勝利する、という劇的な局面があった。このためDNIおよびその事務局の士気が大幅に低下したとみられるのだ。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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