中東―危機の震源を読む (80)

シリア・アサド政権の中枢に及んだ爆発

アサド政権の崩壊過程は新たな段階に入った(c)AFP=時事
アサド政権の崩壊過程は新たな段階に入った(c)AFP=時事

 7月18日、シリアの首都ダマスカスの国家安全保障局で爆発が起こり、ダーウード・ラージハ国防相、アースィフ・シャウカト参謀次長・国防副大臣、ハサン・トゥルクマーニー副大統領補佐官(元国防相)ら、政権中枢の軍・治安担当幹部の多数が死亡し、ムハンマド・シャッアール内相ら多数が負傷した。シリア政府側の報道でもこれを認めており、事実とみられる。http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-18887190http://blogs.aljazeera.com/liveblog/topic/syria-153  シリアで昨年3月に反政府抗議行動が地方から始まって以来、16カ月にわたって続く、アサド政権の緩慢で陰惨な崩壊過程が、また新たな段階を迎え、加速している。7月に入ってから事態の展開の速度は増しており、1日あたりの死者の数も急増している。  反政府抗議行動が各地に広がる中で、アサド政権は首都ダマスカスと、それに並ぶ重要性のある都市アレッポに大規模なデモが及ぶことは、全力で阻止してきた。しかし今回爆発が起こった国家安全保障局は、ダマスカスの中心部でも特に重要なラウダ広場に面しており、ここにまで攻撃が至ったという事実は衝撃的だ。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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