堕ちゆく世界の迷走 (26)

「日中冷戦」――今まさに切れんとする日本の最も弱い鎖

「ニューヨーク・タイムズ」紙などに掲載された、中国が尖閣諸島の領有権を主張する広告(c)時事
「ニューヨーク・タイムズ」紙などに掲載された、中国が尖閣諸島の領有権を主張する広告(c)時事

 中国との間の冷戦は否応なく長期化の様相を呈してきた。9月の日本の貿易統計に冷戦の爪痕が現れている。日本の輸出全体の2割を占める対中輸出が前年同月比14%減った。自動車、エンジン、一般機械など総崩れだ。反日デモが暴徒化し、各種の嫌がらせが露骨になったのが15日以降だから、影響がもろに現れるのは10月以降である。輸出減を通じて企業業績や景気の下押し圧力となるだろう。  一連の対日報復がきついのは、日本の景気が下向きかけた局面での出来事だったからだ。海外メディアに明言したことの当否は別として、「尖閣諸島の国有化は中国政府の虎の尾を踏みかねない」という趣旨の丹羽宇一郎中国大使の懸念は正しかった。今回の問題は「日中摩擦ではなく、日日摩擦だ」と声を潜める外交関係者もいる。石原慎太郎都知事が尖閣の買い上げを表明したのを機に、ことを穏便に収めようとして実施した国有化。波風を立てまいとして実施した策が、日中の冷戦を誘発してしまったからだ。

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