シェールガスに傾く英国のエネルギー政策

執筆者:木村正人 2012年12月7日
エリア: ヨーロッパ

[ロンドン]英キャメロン政権は11月23日、今後の電力供給と地球温暖化対策の青写真となるエネルギー法案の概要をようやく発表した。しかし、温室効果ガスを減らし、再生可能エネルギーへの転換を図る「電力供給源の脱炭素化」目標の実現は、次の総選挙後となる2016年に先送りされることになってしまった。英国のエネルギー政策は、どこへ向かっているのか。

「脱炭素化」先送りの波紋

 低炭素社会の実現を経済成長の原動力と位置付けてきたブレア、ブラウンの歴代労働党政権は、温室効果ガスの削減状況をチェックする独立機関・気候変動委員会の方針と軌を一にして政策を進めてきた。
 キャメロン政権も「これまでにないグリーンな政府」をスローガンに地球温暖化対策に積極的に取り組むことを公約にし、(1)2020年までに30%以上の電力を再生可能エネルギーで供給、(2)2050年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で80%削減――などの政府目標を掲げている。
 電力供給源の脱炭素化目標には、発電所から排出される温室効果ガスを、2030年までに劇的に減らす狙いがある。キャメロン政権で保守党と連立を組む自由民主党は、発電量が安定しない風力発電のバックアップとしてガス火力発電所を残し、あとは再生可能エネルギーや原子力などで電力不足を補おうという考えだ。
 ところが今回のエネルギー法案は、脱炭素化を先送りする内容。発表を受け、気候変動委員会のデベン委員長は「脱炭素化目標が先送りされたことに失望を覚える。今回の発表は再生可能エネルギーをめぐる投資環境の不確実さを浮き彫りにしており、サプライチェーン投資やプロジェクト開発に影響を及ぼす恐れがある」との懸念を表明した。政府と同委員会が真っ向から対立するのは今回が初めてのことだ。

カテゴリ: 環境・エネルギー
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