饗宴外交の舞台裏 (150)

中国の席次が「格落ち」したソウルG20の夕食会

執筆者:西川恵 2010年11月16日
エリア: アジア
米英首脳との親密さを演出した李大統領 (c)EPA=時事
米英首脳との親密さを演出した李大統領 (c)EPA=時事

 韓国で開かれたアジアで初めての主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は、初日の11月11日、ソウルでの夕食会で開幕した。  本来、G20首脳会議は、横浜で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(13、14日)の後に開かれる公算が大きかった。しかしAPECに埋没するのを避けるため、韓国の李明博大統領はAPEC直前の開催にこぎつけた。世界の政治・経済における韓国の存在感を示す最高の機会。議長の李大統領の力が入ったのも当然である。  夕食会が行なわれたのは国立中央博物館で、会場は展示室の一角を衝立で区切っただけ。実質的なワーキングランチとするため、ビジネスライクな雰囲気が演出された。世界が金融危機の後遺症で苦しんでいる時、贅沢や浪費をするべきでないと、簡素で質実な会議を心がけたわけである。  メニューは各首脳が好きなものを選べるよう、肉料理、魚料理、ベジタリアンの3種類を用意した。  まず肉料理。〈盈徳のズワイガニのペースト、ライム添え、クスクスと〉〈マッシュルームのクリームスープ〉〈尚州の韓牛のフィレステーキ、江原道のキノコと野菜添え〉〈済州島のミカンのシャーベットとチョコレート、アーモンドのビスケットで〉  魚料理は、上記のメニューの主菜が〈西海のヒラメのバターソース、江原道のキノコと野菜添え〉に変わった。  ベジタリアンは〈ポテト、野菜、豆腐などのゴマソース和え〉〈野菜とライスのトマトソース、キノコとハーブ添え〉。スープとデザートは共通だ。  飲みものは、フランスのワイン醸造家と韓国のオーナーが米カリフォルニアのナパバレーで生産している赤ワイン「オンダ・ドーロ(金色の波)」。ブドウはカベルネ・ソービニョン種で、値段は中クラスだ。  首脳の多くが当日、長距離フライトで韓国入りすることを考え、量を含め負担を少なくした。「一般家庭に招かれたような庶民的メニュー」という。キャビア、フォアグラ、トリュフなど高価な食材は使われなかった。ただ産地を明記した食材は、いずれも与党ハンナラ党の地盤のものばかり。これは偶然だろうか。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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