中東―危機の震源を読む (75)

震災・原発事故報道のさなか、中東で何が起こっていたか

 日本で大地震が発生し、それに伴う津波が間をおかず押し寄せ、そこから引き起こされた原発事故が拡大していく過程で、年初以来、アラブ世界の政治変動に大部分の時間を割いていたBBC、アル=ジャジーラ、CNNなどの国際ニュース・テレビ局の関心が、一転して日本に集中した。3月11日から1週間は、ほぼ常に日本の状況がトップニュースだった。2週間が経過した現在も、日本の状況はトップ3に入り、克明に伝えられている。ほかの2つはリビアとイエメンの情勢であり、さらに、シリアで勃発した反政府抗議運動や、エジプトの民主化の過程が詳細に報じられている。中東の激動はいよいよ拡散し、加速している。日本の状況はあたかもそれらリビアやイエメンといった大混乱の危険地帯と同列であるかのように、国際メディア報道上では取り扱われている。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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