電力の軍門に降った枝野経産相――原発再稼働と料金値上げに論拠無し

執筆者:塩谷喜雄 2012年3月1日
タグ: 原発 中国 日本
エリア: アジア
軍門に降った?(c)時事
軍門に降った?(c)時事

 経団連会長との罵り合いという小芝居の後、枝野幸男経済産業相は、原発の再稼働と家庭用電気料金の大幅値上げを、2つとも実施する意向を表明した。見事な手のひら返し。地域独占に厳しい視線を送ったのはほんの束の間で、今や電力会社と経産官僚の意に沿って動く「使える大臣」に成長したらしい。理屈に強そうな弁護士出身の枝野大臣だが、再稼働と料金値上げの2つは、論理的に決して並立しないことを、ご存じないようだ。再稼働も値上げも、根拠としている数字は、電力需要のピーク値を2500万kWも過大に見積もり、追加燃料費に至っては3倍以上も水増ししている。政策通の大臣なら、数字を一度チェックして判断すべきではないか。官僚のつくった詐欺的試算を鵜呑みにして、利用者だけにリスク負担と経済負担の両方を強いる図は、悪代官の所業といわれても仕方がない。

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執筆者プロフィール
塩谷喜雄(しおやよしお) 科学ジャーナリスト。1946年生れ。東北大学理学部卒業後、71年日本経済新聞社入社。科学技術部次長などを経て、99年より論説委員。コラム「春秋」「中外時評」などを担当した。2010年9月退社。
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