薄煕来に致命傷を与えた谷開来という女性の闇

執筆者:野嶋剛 2012年4月15日
タグ: 中国 香港 台湾

 中国で汚職は犯罪ではない。もちろん刑法上は犯罪だが、権力者の汚職は、権力の失墜があって初めて暴かれるものであり、権力者でいるうちは罪に問われることはまれだ。

いま「谷開来は中国人ではなかった」という噂が広がっている。10日の公式発表で、谷開来は「薄谷開来」と表記されていた。夫の姓を前に並べる名前の呼び方は香港人やシンガポール人など華人には時々見られるが、中国では基本的に見かけない。香港メディアによれば、谷開来は香港に巨額の資産を移転しており、すでに香港人の身分を持っている、つまり香港に移民しているという説がある。そのため、中国の公式発表で薄谷開来という異例の呼び方になったという見方で、確証はないが、なるほどという気もする。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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