饗宴外交の舞台裏 (82)

首相ヘリを緊急着陸させた日系ブラジル人の歓迎

執筆者:西川恵 2004年11月号
エリア: 中南米 アジア

 小泉首相は九月中旬から下旬にかけ、ブラジル、メキシコ、米国(ニューヨークの国連本部)を訪問した。ブラジルは、日本の首相としては九六年の橋本首相以来八年ぶりで、日系人(百四十万人)の期待は大きかった。 九月十四日、サンパウロ州から訪問を開始した小泉首相は、円借款で行なわれているチエテ川流域の環境改善事業の現場や、サトウキビ畑やオレンジ畑の視察をこなしたあと、離れたグァタパラ農場にヘリコプターで向かった。 グァタパラは一九〇八年、移民船「笠戸丸」で日本人のブラジル移住者第一陣が入った土地で、移住者たちはコーヒー園の季節労働者として働いた。戦後、移住者たちは土地を伐り拓き、一帯を一大農場地帯に変えた。

カテゴリ: 軍事・防衛
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top