亀裂深まるマレー人と華人――マレーシア総選挙から見えるもの

執筆者:野嶋剛 2013年5月9日
タグ: 中国 インド 日本
エリア: アジア

 マレーシア総選挙の結果が6日明らかとなった。結果は与党連合・国民戦線が全222議席中133議席を獲得し、政権維持に成功した。政権交代を期待する声もあった野党連合・人民連盟の議席数は改選前より7議席伸ばしたものの、事前に陣営で「最低ライン」と見ていた100議席に届かない89議席にとどまった。

 筆者は数日前、本サイト「中国の部屋」で「与党連合の退潮はさらに強まるものの、政権交代が起きるかどうかという意味では、野党連合があと一歩およばず、与党連合が逃げ切る」と選挙結果を予測した。基本的に予測通りの結果となったが、今回の選挙結果で勝敗以上にむしろ注目すべきは、マレー人と華人との間の亀裂がいっそう深まったという点であろう。与党連合が今後、マレー人をあらゆる面で優遇してきた「ブミプトラ政策」の見直しに踏み切らなければ、国家の解体をもたらしかねない深刻な民族対立を招くリスクが高まったことを理解すべきだ。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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