サイゴン陥落、戦争終結から三十年。今や人口の七〇%を三十五歳以下が占める「若い国」に変化の大波が押し寄せている。[ホーチミン市発]ブー・ティ・ロイさん(七三)は今でも三十年前のあの日のことを鮮明に覚えている。一九七五年四月二十九日の午後二時頃。ロイさんが家政婦をしていたサイゴン(現ホーチミン市)中心部のアパートの屋上に一機のヘリコプターが轟音とともに飛来した。「まさかヘリコプターが飛んできて、屋上から人を運び出すなんて」。ロイさんの雇い主は米政府の高官で、そのアパートの屋上が米国に協力したベトナム人の緊急脱出用のヘリポートとして使われたのだ。
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