クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

富士の高嶺の国際化

執筆者:徳岡孝夫 2013年7月16日

 誰も書かないし、また書く必要もないのだろうが、いま騒ぎになっている安愚楽牧場の社名は、仮名垣魯文の『安愚楽鍋』(明治4-5年)から取ったのであろう。文明開化の先頭を切った文学である。

 まだチョンマケに二本差した武士が江戸の町を歩いていた。それが町人、職人たちと一つ座敷に座って、それまで禁忌だった牛鍋を突く。魯文は「御一新」直後の社会革命を、旧幕時代の戯文で描写している。「しからば左様」の時代は永遠に去った。

 

 似たような革命は、このほど21世紀の日本にも起った。御存じ富士山の世界文化遺産入りである。

カテゴリ: 社会 カルチャー
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top