中華圏の「簡体字・繁体字」論争に思う

執筆者:野嶋剛 2013年8月28日
エリア: アジア

「中国では半分の人間は繁体字を読めないらしい。もう中華文明は中国大陸で死んだも同然だ」

 繁体字とは、香港、台湾などで使われる伝統的な漢字のことである。一方、中国では識字率向上のために簡体字が使われている。導入から半世紀以上も経過して簡体字はすっかり定着し、知識層以外は繁体字が読めないのが現状だ。

 香港の人気俳優・黄秋生が中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で最近つぶやいたこの言葉に、中国人は当然反発した。「中国には13億の人口がおり、繁体字の方がマイナーではないか」「香港も中国の一部なら簡体字を導入せよ」など反発が広がった。一方、繁体字サイドの香港・台湾からは「繁体字こそ本当の漢字であり、中華文明の伝統を受け継いでいる」と反論が出ている。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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