「慣習」と「民主主義」の両立:インドネシア大統領選余話

執筆者:川村晃一 2014年9月14日
エリア: アジア

 日本では、昨年夏の参院選で「得票がゼロ票なのはおかしい」との抗議を受け、香川県高松市選管による不正開票が発覚したことがあった。

 7月9日に実施されたインドネシアの大統領選挙でも、公式結果で敗者となったプラボウォ・スビアント候補が憲法裁判所に不服を申し立てた際の理由の1つが、複数の地区での「得票ゼロ」だった。ところが、8月21日に下された判決では、この「得票ゼロ」が実際に確認されたにもかかわらず、問題とは見なされず、「伝統的な投票慣習」の結果だったとして法的に認められた。

 筆者も、この判決が下されるまで、インドネシアの特定の地域でこのような投票慣習があることを寡聞にして知らなかった。この伝統的な投票慣習を紹介しながら、外部から導入された近代的な政治システムと伝統的な文化慣習とをインドネシアがいかに両立させているのか、その知恵を紹介する。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
川村晃一(かわむらこういち) 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 海外調査員(インドネシア・ジャカルタ)。1970年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、ジョージ・ワシントン大学大学院国際関係学研究科修了。1996年アジア経済研究所入所。2002年から04年までインドネシア国立ガジャマダ大学アジア太平洋研究センター客員研究員。2024年からインドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)客員研究員。主な著作に、『教養の東南アジア現代史』(ミネルヴァ書房、共編著)、『2019年インドネシアの選挙-深まる社会の分断とジョコウィの再選』(アジア経済研究所、編著)、『新興民主主義大国インドネシア-ユドヨノ政権の10年とジョコウィ大統領の誕生』(アジア経済研究所、編著)などがある。
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