「戦争と一体の近代国家」を批判したニスベット

執筆者:会田弘継 2006年12月号
エリア: 北米

 アメリカ中間選挙で共和党が大敗し、ブッシュ大統領はラムズフェルド国防長官をただちに解任した。選挙はイラク戦争の進め方をめぐって争われ、大統領は「既定路線を進む」という方針に国民が「ノー」を突きつけたと認めた。「大統領二期目の中間選挙で与党が大負けするのは当たり前だ。任期二年を残すだけで政権は死に体(レームダック)だから」と言う人たちもいる。「イラク情勢が原因で共和党は負けたのではない。投票所出口調査で一番重要な問題とされたのは汚職や腐敗だ」という声もある。 だが、出口調査からは別の重たい数字が出ていた。大統領選でないのに三割以上の人がブッシュ大統領に抗議するため投票したと答えた。普段の中間選挙ではあり得ない高い数字であり、大統領に衝撃を与えたはずだ。理由が三年を越えて混迷を続けるイラク情勢なのは明らかだ。米兵の死者は三千人に迫り、イラク市民に至っては何万、いや何十万人も死んだという推定さえ出ている。アメリカは道を踏み誤った。多くの国民はそう感じ、無言の投票で声を上げた。「進む道を変えて欲しい」。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
会田弘継(あいだひろつぐ) 関西大学客員教授、ジャーナリスト。1951年生まれ。東京外語大英米語科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを務め、現在は共同通信客員論税委員、関西大学客員教授。近著に『世界の知性が語る「特別な日本』』 (新潮新書)『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)、『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫)など。訳書にフランシス・フクヤマ著『政治の衰退』(講談社)など。
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