饗宴外交の舞台裏 (109)

モロッコで腕をふるう国王専属の日本人料理人

執筆者:西川恵 2007年2月号
エリア: アフリカ

 モロッコの首都ラバトの王宮で、国王モハメド六世の専属料理人をしている大沼秀明さん(三二)は、正月が明けた一月上旬、休暇で一年ぶりに、奥さんの栄子さんと故郷の山形県上山市に戻った。モロッコに行くときにはいなかった長男の卓稔ちゃん(五カ月)も一緒だ。 大沼さんがモロッコ国王の専属料理人となった経緯を聞くと、改めて人と人のつながりの妙に感じ入ってしまう。直接のきっかけは一昨年十一月、モハメド六世の来日だった。 国賓として来日した国王は元赤坂の迎賓館に四日間、宿泊したが、このとき国王の食事の賄を担当したのが大沼さんだった。当時、東京・銀座のレストランでシェフをしていた大沼さんが大役を引き受けることになったのは、ルシェヘブ駐日モロッコ大使の依頼だった。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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