なぜサーベラスが「自動車産業を変える」のか

執筆者:五十嵐卓 2007年7月号
エリア: 北米

クライスラー買収で競り合ったのは、「部品メーカー」と「買収ファンド」だった。自動車産業の「再定義」ともいうべき劇的変化が進んでいる。 ダイムラークライスラーの北米クライスラー部門の売却劇は二転三転した挙げ句、投資ファンドのサーベラス・キャピタル・マネジメントによる買収という「予想外の結末」(日本の自動車メーカー幹部)となった。 ドラマはまずゼネラル・モーターズ(GM)、トヨタ自動車など既存の大手完成車メーカーによる買収話でスタートした。日本メーカーはもちろんGMなども本気をみせない中で浮上したのは中国メーカー。中国の“ビッグスリー”の第一汽車、上海汽車などの名前が相次ぎ挙がった。中国メーカーにとって、衰えたとはいえクライスラーの持つ様々な技術、開発力は魅力的だったからだ。世界市場進出のためのブランド力獲得にもまたとないチャンスだった。「QQ」など小型車でシェアを伸ばす中国の新興メーカー、奇瑞汽車も関心を示した。ただ、各社とも金額面での折り合いがつかなかったことに加え、貿易摩擦でただでさえ厳しさを増す米国内の反中ムードをさらにあおりかねない、との政治的判断が中国側に働き、交渉は進まなかった。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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