「コストシフト」で介護改革に挑むドイツの漸進

執筆者:斎藤義彦 2007年12月号
エリア: ヨーロッパ

伸びない保険料、増える要介護者。先進国が等しく直面する介護保険制度の構造問題を解決するため、ドイツが一歩を踏み出した。 ドイツ西部の老人ホーム。社員寮を改造したがらんとした部屋で二人の年老いた男性がベッドに寝かされている。そのうちの一人(六八)が立ち上がろうと必死に上半身を起こすが、それ以上は動けない。腹の部分をベルトで拘束されているからだ。「この人は認知症で、放っておいたら歩き続けてしまう。だから縛らないと」。ヘルパーの女性(三二)は事も無げにそう話す。 男性は農業を営んでいたが、徘徊を始めたため、二年前にホームに入所した。百メートルほどの真っ直ぐな廊下を際限なく往復する。夜は拘束されても上半身を起こしてベッドの柵をつかみ揺すぶり続ける。目は遠くの方を見ているようだ。

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