80時間世界一周 (41)

オーストラリア首相の落選左右したのはアジアパワー

執筆者:竹田いさみ 2008年1月号
エリア: オセアニア

 真夏のクリスマスは、南半球の風物詩である。オーストラリアやニュージーランドでは、強い日差しが降り注ぐ中、見た目にも暑苦しいサンタクロースが商店街を闊歩する。南半球の人々は、「真冬」と「真夏」、二つのクリスマスをうまく使い分けるようになっており、自分の好みに応じてクリスマス休暇を選択する。炎天下でビールを片手にビーチへ繰り出しマリンスポーツを楽しむもよし、オーバーコートを持参して真冬の英国か米国に渡るもよし。 二〇〇七年のクリスマスに、勝利の美酒に酔いしれるのは、十一月の総選挙で大勝した労働党のケビン・ラッド新首相。逆に憤懣やるかたない思いでいるのが、敗れた保守連合のジョン・ハワード前首相だ。ハワード氏は一九九六年に首相になって以来、約十二年にわたって長期政権を築いてきたが、今回の選挙では、労働党から元テレビキャスターで知名度の高い女性の「刺客」を送り込まれ、思いもかけず自らの議席も失った。「賞味期限が切れた」現職首相が「刺客」によって落選――マスコミ報道ではこのように理解されがちだが、本当の理由は、もう一つある。有権者の顔ぶれが様変わりしたのだ。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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