「クリミア統合」はロシアに「凶」:1年後のバランスシート

執筆者:名越健郎 2015年4月14日

 ロシアによるウクライナ領クリミア併合から3月で1年を経たが、併合のバランスシート(損得勘定)はマイナスとなっている。国際的孤立は深まり、経済危機も進行し、国民の陶酔感も醒めつつある。プーチン政権がクリミアを返還することはあり得ないが、今後クリミア併合に伴う巨額のコストが重圧となり続けるだろう。

 

中国がロシア離れ

 中国の李克強首相が3月15日、全人代終了後に行った記者会見は、ロシア外務省に衝撃を与えたはずだ。日本では報じられなかったが、オーストラリア人記者からクリミア問題への外交姿勢を問われた李首相は、「中国はウクライナ問題で一貫して客観的で公正な立場を保持している。われわれはウクライナの独立と主権、領土保全を尊重する。最近欧州で、ウクライナのポロシェンコ大統領と会談した際にもこの話をした。彼は内容を公表していいかと打診してきたので、『問題ない。話した通りに公表してくれ』と回答した」と述べた。「ウクライナの領土保全尊重」とは、クリミア併合が違法であることを意味する。

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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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