19回目の新憲法制定:タイは「無限ループ」から抜け出せるか

樋泉克夫
執筆者:樋泉克夫 2015年5月7日

 4月17日、タイのプラユット暫定首相は90分に及ぶテレビ演説を行い、「私の統治を高圧的と呼ぶ人もいるが、すべてはタイのためだ」と内外からの強権政治批判に強い反発を見せる一方、2005年秋以来続いてきた政治混乱を根絶するためには「根本的な改憲が必要である」と訴え、暫定政権への国民的理解を求めた。同首相の狙いが、タクシン派再起を法的に封じ込めるための「根本的な改憲」であることはいうまでもない。相変わらずタイ政治は、永い海外逃亡生活を余儀なくされているタクシン元首相を中心に動いているわけだ。

 

最高権力者だった「陸軍司令官」

 クーデターを数多く重ねてきたタイだけに、クーデターから新政権発足までの政治日程は、クーデター成功(憲法停止、国会解散)→暫定政権・立憲議会発足→新憲法審議・成立と続き、1年前後を経て実施される総選挙を経て民政移管(新政権発足)、とほぼ定まっていた。クーデターから民政移管までの間に、軍政(暫定政権)当局は、民政移管後も政権を維持すべく腐心する。その核心が新憲法制定過程での閣僚の要件――下院議員でなくても、あるいは現役官僚でも閣僚就任可能の条項を盛り込むか否かにある。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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