「玄永哲」粛清の謎を追う(下)恐怖政治の強化

平井久志
執筆者:平井久志 2015年5月26日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 朝鮮半島

「白頭山5人組」

 玄永哲人民武力部長がロシアを訪問した4月13日から20日は北朝鮮では行事の多い時期だ。4月15日は故金日成主席の誕生日であり、4月14日には中央報告大会が開催されている。
 また、この期間で注目されるのは4月11日から朝鮮人民軍の戦闘飛行士たちが白頭山地区革命戦跡地の踏査行軍を行い、金正恩第1書記は4月17日に白頭山地区を訪問し、踏査行軍を行った飛行士たちを激励し、18日に飛行士たちとともに白頭山に登った。この白頭山行きには5人の側近が同行した。
 金正恩第1書記は2013年12月に張成沢党行政部長を粛清する前に、革命聖地である三池淵を訪問した。ここに8人の側近が随行し、張成沢党行政部長の粛清を最終決定したといわれている。
 同行した8人は金元弘(キム・ウォンホン)国家安全保衛部長、金養建(キム・ヤンゴン)党統一戦線部長、韓光相(ハン・グァンサン)党財政経理部長、朴泰成(パク・テソン)労働党組織指導部副部長、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)労働党組織指導部副部長(当時)、金炳鎬(キム・ビョンホ)労働党宣伝扇動部副部長、洪ヨンチル労働党機械工業部副部長、馬園春(マ・ウォンチュン)労働党財政経理部副部長だった。
 当時、この「三池淵8人組」が「新側近」といわれたが、このうち、韓光相財政経理部長、馬園春同副部長(国防委員会設計局長)は今年に入って失脚したとみられている。
 代わって登場したのが、今回金正恩第1書記に同行した「白頭山5人組」だ。黄炳瑞軍総政治局長、崔龍海(チェ・リョンヘ)党書記、金養建党統一戦線部長、李載佾(リ・ジェイル)党宣伝扇動部第1副部長、李炳哲(リ・ビョンチョル)党第1副部長(前空軍司令官)の5人だ。
 玄永哲人民武力部長の粛清について白頭山で秘密協議が行われたかどうか確証はないが、金正恩第1書記の側近勢力が「三池淵8人組」から「白頭山5人組」に代わったという感じはする。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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