テロリストの誕生(9)イエメン・コネクション

執筆者:国末憲人 2015年6月6日
エリア: ヨーロッパ 中東

 表面上穏やかで、内に頑強さを秘める様子は、風刺週刊紙『シャルリー・エブド』編集部を襲撃したクアシ兄弟に共通している。あるいは、カルト集団に絡め取られた人の多くがこのような性格を帯びるようになる、とも言えるだろう。

 ただ、いくら精神を鍛えても、それだけでテロは実行できない。テロのためには技術が必要だ。フランスにいて技術を磨くのは難しい。アメディ・クリバリ夫婦がジャメル・ベガルとともにミュラの山中でクロスボウや銃を構えたように(2015年5月9日「テロリストの誕生(5)『監視下』でも深まる交流」参照)、単なるコスプレで終わってしまう。戦乱の地に赴き、武器の扱い方、つまり人の殺し方を身につける必要がある。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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