テロリストの誕生(9)イエメン・コネクション

国末憲人
執筆者:国末憲人 2015年6月6日
エリア: ヨーロッパ 中東

 表面上穏やかで、内に頑強さを秘める様子は、風刺週刊紙『シャルリー・エブド』編集部を襲撃したクアシ兄弟に共通している。あるいは、カルト集団に絡め取られた人の多くがこのような性格を帯びるようになる、とも言えるだろう。

 ただ、いくら精神を鍛えても、それだけでテロは実行できない。テロのためには技術が必要だ。フランスにいて技術を磨くのは難しい。アメディ・クリバリ夫婦がジャメル・ベガルとともにミュラの山中でクロスボウや銃を構えたように(2015年5月9日「テロリストの誕生(5)『監視下』でも深まる交流」参照)、単なるコスプレで終わってしまう。戦乱の地に赴き、武器の扱い方、つまり人の殺し方を身につける必要がある。

 クアシ兄弟がアラビア半島のイエメンを訪れたのは、そのような思いからだろう。イエメンでは2009年1月、隣国サウジアラビアから流れ込んだ武装勢力が地元の過激派と合体して「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)を立ち上げ、以後勢力を広げつつあった。後の2012年に民主化運動で崩壊することになるサレハ政権などと恒常的な紛争状態にあった。

 クアシ兄弟のイエメン行きには、謎が多い。いつ、どのように、何度行ったのか。行った先で何をしたのか。そもそも兄弟のどちらが行ったのか。乱れ飛ぶ情報を多少整理しつつ、最も可能性の高いストーリーを考えてみたい。

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執筆者プロフィール
国末憲人 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員を経て、現在はGLOBE編集長、青山学院大学仏文科非常勤講師。著書に『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)など。
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