クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

SLBMと銅像

執筆者:徳岡孝夫 2015年6月11日
エリア: アジア

 同じトシの普通の日本人なら、大型連休に備え仕事を片付けておこうとシャカリキに働いている時期に、フクシマの砂を採集に行き、首相官邸めがけてドローンを飛ばした40男。
 屋上に着陸したのはよかったが、不幸にも2週間近く、誰も見回りに来てくれなかった。世の中の人は、みな忙しい。首相官邸に勤める人々はとくにそうである。空を見上げて太陽以外に何があるか、見張っているヒマなどない。
 北朝鮮の先進兵器づくりも、少しそれに似ている。

 

 あの秘密の多い国は、世界の中でひたすら自己疎外し、暗い情熱の火を燃やし続けている。マツタケを第三国経由で売って研究・開発資金を稼ぐ狂奔ぶりである。その国が5月8日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の「発射実験に成功」したという。
 ニュースを聞いてお察しの通り、金正恩第1書記は、実験の現場に立ち会ったと彼らは言う。
 北の新聞に出たその写真は、これもお察しのように合成したものだろうが、金ファミリーの御曹司が実験成功を聞いて、いたく感動されたのは事実だろう。
 私は米政権が老将軍アイゼンハワーから40代のJFKの手に渡ったときの米国にいて、原子力潜水艦ノーチラスの北極点海底通過を成功させた歓喜の余韻が残る米社会を見ている。長期間潜航できる大型潜水艦が、世界の海のどこへでも出撃できる。浮上してミサイルを発射すれば、東西冷戦時代の敵の大都市を破壊できる。それは当時、天下無敵の最終兵器だと思えた。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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