テロリストの誕生(10)「チーム・クリバリ」の顔ぶれ

執筆者:国末憲人 2015年6月26日
エリア: ヨーロッパ 中東
クリバリが立てこもり事件を起こしたユダヤ人スーパー(筆者撮影)

 

 大多数の受刑者は、刑期を終えると自らの罪を悔い改め、真っ当な人生を歩もうとする。その意味で、出所後の便りがないのは、基本的にいい知らせだ。アメディ・クリバリの場合も、2014年3月にヴィルパント刑務所を出所し、5月15日に居どころを明らかにする発信器付きブレスレットを外されて以降、消息がぱったりと途絶えた。それはごく普通のことだと当局に見なされ、彼のことは忘れられた。

 以後、クリバリが表舞台に登場するのは、今年1月に風刺週刊紙『シャルリー・エブド』編集部襲撃事件が起きて後のことである。それまでの8カ月近くの間、彼は極力目立たぬよう振る舞った。盗みや強盗を繰り返し、はたまた刑務所の不正を告発したり若手労働者の代表として大統領府に招かれたりと、何かとお騒がせ人生だった彼にとって、珍しくおとなしい時期だった。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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