「TPA法案」を成立させたオバマと共和党の「政治力学」

執筆者:足立正彦 2015年6月30日
エリア: 北米 アジア

 すでに下院本会議で可決されていた大統領貿易促進権限(TPA)法案が6月24日、上院本会議でも賛成60票、反対38票の賛成多数で可決され、オバマ大統領の署名を受けて6月29日(米国時間)に成立した。同法案の成立が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の年内妥結に向けて非常に重要な「弾み」をもたらすことは間違いない。

 もともとこのTPAは、1974年通商法で規定された「ファストトラック権限(早期一括採択方式)」に由来している。外国政府との通商交渉における大統領の立場を強化する目的で、期間を限定し、大統領は議会に事前通告をすれば、議会は行政府が外国政府と締結した通商協定の個別内容について、修正を一切加えずに一括して承認するか否かだけ採択する、という規定である。TPAが現在でも通称ファストトラック権限と呼ばれているのには、こうした背景がある。

カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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