米露「新冷戦」を加速する「中距離ミサイル」の呪縛

名越健郎
執筆者:名越健郎 2015年7月9日
エリア: 北米 ロシア

 ロシアのプーチン大統領が6月16日、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)を40基以上年内に新規配備すると述べるなど、ロシアはこのところ、「核の恫喝」を強めている。欧米の制裁や経済苦境に伴う危機感の表れとみられるが、米露間では現在、軍備管理交渉が行われていないだけに不気味だ。とりわけロシアは、1987年調印の米ソ中距離核戦力(INF)全廃条約から脱退し、中距離核を再配備する動きも見せており、そうなれば、欧州は文字通り「新冷戦」に逆戻りする。

「核の選択」に傾斜するロシア

 大統領が新規配備を予告したのは、多弾頭のICBM「ヤルス」とみられ、5月9日の対独戦勝式典のパレードにも登場した。2010年の米露新戦略兵器削減条約(START)で米露が配備できる戦略核の上限は1500発で、劣化による老朽ミサイルの更新となる。ショイグ国防相によれば、ロシア軍は昨年も38基のICBMを新規配備しており、実際には通常の更新といえよう。

 プーチン大統領は3月のテレビ番組でも、昨年のウクライナ危機で「核使用の準備を検討した」と述べたり、軍事パレードにICBMや戦術核、戦略爆撃機を登場させるなど、核をめぐるデモンストレーションが目立つ。今年3月の大規模な全軍抜き打ち演習では、「限定的な先制核使用が想定された」(共同通信)とされるほか、飛び地のカリーニングラードに戦術核ミサイル「イスカンデル」が運び込まれた。

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執筆者プロフィール
名越健郎
名越健郎 1953年岡山県生れ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長を歴任。2011年、同社退社。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授。著書に『クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ関係史』(中公新書)、『独裁者たちへ!!―ひと口レジスタンス459』(講談社)、『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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