よろめく「金正恩路線」(下)幹部の世代交代「5年以内」に

執筆者:平井久志 2015年7月29日
エリア: アジア

軍には「分かりました」しかない

 党機関紙「労働新聞」は7月13日に「野戦型の指揮メンバー」という論説を掲載した。論説は、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の「活動家たちは大衆を党の思想貫徹戦、党政策擁護戦へ総決起、総発動させる野戦型の指揮メンバーにならなければならない」という言葉を引きながら、金正恩時代に求められる幹部の姿勢を強調した。
 金正恩時代の幹部には「党政策に対する絶対性、無条件性の精神を持つ」ことを求め、次に「科学的に、革新的に作戦を立て、主導的に、創発的に事業を展開する」ことを求めた。論説は「命令指示に対する絶対性、無条件性の精神が革命軍隊の生命だ。今日、わが人民軍隊の指揮官たちは、敬愛する最高司令官同志(金正恩第1書記)の命令、党の決定指示にただ『分かりました』という答えしか知らない」とした。
 あたかも、玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)前人民武力部長や辺仁善(ピョン・インソン)前作戦局長が余計な口答えをしたために粛清の対象になったことを想起させるように、軍人には「分かりました」という言葉しかないことを肝に銘じよという論説だ。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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