「爆弾テロ」に揺れるタイの「新憲法」事情

樋泉克夫

 8月17日午後7時、参詣客の絶えないエラワン廟に仕掛けられた爆弾が爆発し、現地メディアが18日早朝までに伝えるところでは、22人が死亡(中国、台湾からの観光客を含む)、123人(日本人男性1人を含む)がケガをしたとのことだ。

 同廟はバンコクの中心街の交差点角に位置し、外国人向けの観光名所として知られるだけでなく、幹線道路を挟んだ向かい側にはタイ国家警察があり、また交差点を挟んだ斜め向かいの日系デパート前の広場は政治的街頭行動の中心地でもある。2006年以来、タクシン支持派対タクシン反対派の対立が続くタイだが、両派とも運動最盛期には附近一帯の道路を封鎖し、首都機能をマヒさせ、自らの政治的主張を強硬にアピールしたものだ。また同廟に隣接するエラワン・ホテルは、一時はタクシン支持派の前線本部となった経緯もあるだけに、政治的には象徴的な意味合いを持つ場所でもあるのだ。

 犯行声明が出されていない段階で軽々な判断は差し控えたいが、かりにテロ事件とするなら、南タイで間歇的に発生しているイスラム・ゲリラの犯行の可能性も排除できないが、やはり事件の背景には、タイ政治の底流を流れるタクシン支持派対反タクシン派の対立があると考えられる。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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