日本は右傾化しているのか?

 米国で日米関係を議論していると、「日本は右傾化しているのか」とか、もっと踏み込んで「日本は軍国主義化(militarized)しているのか」というような質問をしばしば受ける。日本における「右」と「左」の区別は混沌としているので、そのあたりの議論は宇野重規氏が2年前に『フォーサイト』に執筆した論考(「日本において『保守とリベラル』『右と左』は何を意味するか」)を参照していただくとしても、「日本の右傾化」という問いは第2次安倍政権が発足して以来増しているように思われる。
 まず断っておかなくてはいけないのであるが、「日本の右傾化」という問いそのものにはあまり意味はない。日本右傾化の根拠は、「右寄りの安倍晋三氏が首相になったのであるから安倍氏を選んだ日本国民も右傾化しているに違いない」というものである。しかし、2012年衆議院選挙での自民党の勝利は、いうまでもなく、それまで政権を担っていた民主党への、とくにその経済政策に対する失望によるものであり、安倍氏の右寄りの政治的立場が支持されたからでは決してない。2014年の衆議院選挙でもその傾向は変わらなかったといってよい。
 しかしながら、「右と左」の話は現在国会で審議されている安保法制をめぐる議論でも話題になっているので、前回の論考「安保法制議論の『迷走』を米国から見る」で指摘したように国会審議で安全保障問題がまともに議論されていないという現実を踏まえて、安保法制が日本の安全保障に抜本的な変革をもたらすものなのかという点を、本稿では考えてみたい。

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