テロリストの誕生(19)地下室の「絶望」と「希望」

国末憲人
執筆者:国末憲人 2015年9月4日

 アメディ・クリバリによるユダヤ教徒向けスーパー「イペール・カシェール」立てこもり事件について、『リベラシオン』紙は今年6月、何が実際に起きたかを検証する特集を掲載した。スーパーの地下室に逃げ込んだ客のうち4人に呼びかけて集まってもらい、当時の状況を一部仮名のルポとして再現したのである。そこには、クリバリの高揚ぶりや人質たちの揺れ動く心理が、浮き彫りにされている。

 

顔に銃口を定めて……

 地下室に逃げた客のうち、配管業を営むヨアン(38)は、比較的楽観的だった。「強盗なら、どうせ5分もすると取るものを取っていなくなる」と考えていた。主婦のサンドラ(42)は逆に『シャルリー・エブド』襲撃事件のことを思い浮かべ、同じことが自らの身に降りかかると覚悟した。「このスーパーに押し入ってきた男も、早速人を殺してしまった。私たちもみんな、死ぬことになる」

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執筆者プロフィール
国末憲人 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員を経て、現在はGLOBE編集長、青山学院大学仏文科非常勤講師。著書に『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)など。
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