「天安門城楼」の外交戦(下)北朝鮮の孤立と「人工衛星」

執筆者:平井久志 2015年9月11日
エリア: 北米 アジア

 中国は朴槿恵(パク・クネ)大統領に最大級の厚遇をしたが、これと対照的だったのが北朝鮮の崔龍海(チェ・リョンヘ)党書記だ。崔龍海党書記は努光鉄(ノ・グァンチョル)人民武力部第1副部長や李(リ)ギルソン外務省次官を同行して瀋陽経由で9月2日、北京入りした。
 中国は、崔龍海党書記を30人の最高指導者級来賓の1人として分類した。崔龍海党書記の父親は金日成(キム・イルソン)主席とともに旧満州で中国共産党傘下の東北抗日連軍で抗日パルチザン闘争を展開した崔賢(チェ・ヒョン)元人民武力部長だ。
崔龍海党書記は2013年5月に金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の特使として訪中し、習近平主席と会見し、金正恩第1書記の親書を伝えた。北朝鮮はそれまでは、朝鮮戦争の休戦協定の白紙化などを宣言し、極度の挑発路線を走ったが、この崔龍海特使の訪中を機に、挑発路線を沈静化させていった。
 中国は中朝関係を考慮、さらに習近平主席は2013年に会見に応じているだけに、崔龍海党書記に対しても首脳レベルの処遇をするのではないかと見られたが、結果はそうではなかった。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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