「軍事的合理性」を学ぶべし:「安保法案」成立の補完作業として

執筆者:林吉永 2015年10月13日

「政争」という文脈では何でもありだろうが、今回の安保法制審議を振り返ると、戦争と軍事力の役割に関わる根本的な知見をもとに議論されたとは言い難い。米国の優れた安全保障専門家と言われるR・アーミテージ氏は、某新聞に寄稿して「国会において優れた議論が行われた」と指摘している。しかしそれは、 “Boots on the ground” を言い続けてきた思いが通ったという氏自身の納得を示したものであって、軍事を深く理解しているであろうアーミテージ氏が国会での議論を真に評価したという意味とは思えない。残念ながら、法案成立まで、議論の深化を促す軍事的識見の不足が目立ち、別けても政治家の言動には、シビリアン・コントロールへの危惧を喚起するものさえあった。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
林吉永(はやしよしなが) はやし・よしなが NPO国際地政学研究所理事、軍事史学者。1942年神奈川県生れ。65年防衛大卒、米国空軍大学留学、航空幕僚監部総務課長などを経て、航空自衛隊北部航空警戒管制団司令、第7航空団司令、幹部候補生学校長を歴任、退官後2007年まで防衛研究所戦史部長。日本戦略研究フォーラム常務理事を経て、2011年9月国際地政学研究所を発起設立。政府調査業務の執筆編集、シンポジウムの企画運営、海外研究所との協同セミナーの企画運営などを行っている。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top