経済の頭で考えたこと (78)

TPPの核心とは何か:「国内市場の逼塞」を超えて

執筆者:田中直毅 2015年10月26日
エリア: 北米 中南米 アジア

 おもに人工知能の開発者たちが使い始めている用語だが、脳の機能はゴースト(ghost)とドリーム(dream)とに分けられるのだという。ゴーストとは幽霊ではなく、幽霊のようにつきまとって離れないような、それまでに身につけてきた認識枠組みとでもいうべきものだ。これに対してドリームとは、もし一部に知覚上の欠落があったとしても、全体像を構成するために、欠落部分を架橋で補うような意識作用を指す。
 こうした脳を通ずる作用によって脈絡づけ(=コンテクストcontext)が行われ、その結果として、ものの見方が定着するという。ゴースト、ドリーム、コンテクストと重ねることにより、固定的な、あるいは安定的な認識枠組みが成立するに至る。
 しかしこれだけでは変革は生まれない。脈絡づけに大きな変革をもたらすための要因として想像力があるはずだ。ゴーストを冷静に認識できれば、変革への道筋も浮かび上がる可能性がある。想像力を鍛えることの意味はここにあるはずで、意識的な認識の組み換えという営為もここに発する。

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執筆者プロフィール
田中直毅(たなかなおき) 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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