国際人のための日本古代史 (70)

正月に考える「物部氏」と「神道」の深い関係

執筆者:関裕二 2016年1月5日
タグ: 日本
エリア: アジア

 朝廷の正月の大切な儀礼のひとつに「朝賀(ちょうが)」がある。皇太子以下の諸臣が天皇に新年のお祝いを奏上するのだ。そしてこの時、なぜか「物部氏」が重要な役目を負っていた。
 たとえば『日本書紀』持統4年(690)正月元日条に物部麻呂(のちに石上=いそのかみの=麻呂と改める)が大盾を立てたとある。楯は武具だが、呪術的な意味が込められていた。『続日本紀』天平14年(742)正月元日条にも、百官朝賀の場で石上と榎井(物部系)の両氏が大楯と槍を立てたとある。
 正月だけではない。『延喜式』には、大嘗祭に際し、やはり石上と榎井の両氏が楯と戟(槍)を立てると記される。『続日本紀』や『古語拾遺(こごしゅうい)』にも同様の記事が載る。このような例は、他の豪族には見られない。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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