航空自衛隊の「女性戦闘機パイロット」登用への危惧

林吉永
執筆者:林吉永 2016年1月30日
カテゴリ: 外交・安全保障
エリア: 日本

 昨年11月のことだが、防衛省ホームページ上で「航空自衛隊の女性自衛官の『制限を解除する配置:戦闘機、偵察機』を決定した」と発表された。航空自衛隊のコメントは、「性差によらず個人の能力、適性及び意欲を有する隊員を全ての配置に登用することにより、男女ともに全ての隊員が等しく責任を担う組織として、我が国の平和と国民の皆様の安全を確実に守る努力を続けてまいります」としているが、「何故女性戦闘機パイロットか」は見えてこない。

 以前、航空自衛隊の幹部候補生学校では男女の訓練にいくつかの違いがあった。体育では男子がラグビー、女子がテニス、長距離計測走では男子が10キロ、女子が5キロと分けられていた。このような「女性に優しい傾向」は、戦闘機パイロットへの女性登用について危惧を抱かせてしまう。航空自衛隊は、戦闘機パイロットの教育訓練、そして作戦運用の領域に女性を受け入れる準備ができているのであろうか。

 秘密保全の制約が解けた冷戦時の事例だが、米空軍戦略ミサイル基地では、24時間発射態勢維持のため、1つのサイロ(地下発射管制室)に3人が勤務していた。男女が共に上番しても、仮眠室は男女の別が無く、シャワールームも共用であった。同様の勤務体制は、レーダーサイトや艦船、陸軍の野戦においても見られた。
 深刻な問題は、湾岸、イラク、アフガンにおける米軍展開時の味方将兵による女性将兵への性的暴行であった。それは、従軍女性将兵のPTSD(Post-Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)として、アメリカの社会的問題となっている。
 女性戦闘機パイロットが行動中に被弾しベールアウト(脱出)しても、敵方の手に落ちれば、「イスラム国」(ISIL)に囚われたヨルダン人男性パイロットが受けた残虐行為以上の悲惨な目に遭うだろう。

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執筆者プロフィール
林吉永
林吉永 はやし・よしなが NPO国際地政学研究所理事、軍事史学者。1942年神奈川県生れ。65年防衛大卒、米国空軍大学留学、航空幕僚監部総務課長などを経て、航空自衛隊北部航空警戒管制団司令、第7航空団司令、幹部候補生学校長を歴任、退官後2007年まで防衛研究所戦史部長。日本戦略研究フォーラム常務理事を経て、2011年9月国際地政学研究所を発起設立。政府調査業務の執筆編集、シンポジウムの企画運営、海外研究所との協同セミナーの企画運営などを行っている。
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