サウジ主催の合同軍事演習「北の雷鳴」が示す中東秩序の「新現実」

池内恵
執筆者:池内恵 2016年3月5日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中東

 サウジアラビアで大規模な合同軍事演習が行われている。「北の雷鳴(Ra'ad al-Shamal)」と名付けられた演習は、サウジアラビア北東部ハファル・バーティン(Hafar al-Batin)のハーリド王軍事都市で、公式には2月14日から3月10日にかけて行われるものとされている。演習には20カ国(あるいは21カ国)から15万人(一部の報道では35万人とも)の兵員が参加し、戦闘機2540機、戦車2万両、ヘリコプター460機が投入されるというが、実際にはそのような規模にならないと専門家は見る

 ハファル・バーティンはサウジ北東部の、クウェートとイラクとの国境に近い。イランの影響力が増すイラク(特に南部)に対峙する場所で、親サウジ同盟を誇示するのが目的だろう。サウジは昨年12月に35カ国(名指された国が認めていない場合もあり、34カ国とする場合など数え方はまちまちである)の「対テロ連合」を発表したが、その実態は疑われている。同時に、1月末からのロシアに支援されたアサド政権軍のアレッポ付近への攻勢に際して、2月4日にサウジ軍の報道官のアスィーリー准将がシリアへの地上軍展開の可能性に触れ、8日にはジュベイル外相も同様の発言を行ったことで、サウジのトルコと連合したシリア介入がロシアとの衝突に結びつきNATOを巻き込む可能性が取り沙汰され、緊張と不透明感が高まった。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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