インテリジェンス・ナウ
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「海底」「上空」「サイバー」で米国を脅かすロシア:新冷戦の恐怖強まる

春名幹男
執筆者:春名幹男 2016年3月16日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 北米 ロシア

 米国とロシアとの関係は本当に、「新冷戦」と呼べるのかどうか。米中央情報局(CIA)などの情報機関はプーチン・ロシア大統領の本音をつかみかねており、判断に苦しんでいる。CIAは彼の一挙手一投足を分析している、という情報が流れたこともあった。
 だから、米情報機関はロシア軍の動きには極めて敏感だ。昨年来、ロシアが海底、米上空、サイバー空間で奇妙な動きを見せ始めたことにも強い関心を集めている。
 海底では情報通信網の重要部分を成す海底ケーブル、上空では無人機やサイバーを使って重要インフラを狙い、「有事あるいは紛争時には攻撃を計画している可能性がある」(ニューヨーク・タイムズ紙)とみて、米軍および米情報当局は警戒を強めている、というのだ。果たしてロシアの真の狙いはどこにあるのか。日ロ関係にも深刻な影響を及ぼす米ロ関係の深層を探ってみたい。

ロシア海軍スパイ船

 ロシア国営メディアRTによると、昨年9月、ロシア海軍の海洋調査船「ヤンタル」が大西洋を横断、米国東海岸からカリブ海に南下、英領タークスカイコス諸島をへてキューバに向かった。米メディアは匿名の国防総省高官筋の話として、「海底ケーブルの所在確認作業」を行っていると伝えたが、RTは潜水装置を装備していることを認めたものの、深海調査と潜水艦救援活動が「主要な任務」とスパイ活動を否定していた。
 しかし、ニューヨーク・タイムズ紙によると、北海から北東アジア、米国近海に至る海域の海底ケーブルのルート近くでロシア海軍の活動が活発化しているという。その活動は「冷戦時に匹敵する」ほどの頻度とされている。
 世界を電子的に結合するケーブルは200本近くあり、インターネットやメールの利用に不可欠で、切断された場合、その経済的損失は非常に大きい。
 しかし、米情報機関が最も懸念しているのは、閉鎖系の軍事情報通信ネットワークの安全だ。ウィキリークスが情報暴露に使ったSIPRNETと呼ばれるネットワークや、エドワード・スノーデンがアクセスして情報入手に使ったトップシークレットのネットワークが危害を受けることを最も恐れている。
 実は1971年10月、米海軍潜水艦は「アイビー・ベル」と名付けた秘密工作で、日本北方のオホーツク海でソ連核兵器部隊が使用していたケーブルを発見し、盗聴装置を取り付けることに成功したことがある。今度は米側が同様のロシアによる工作を恐れているというわけだ。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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