小説・めぐみ園の夏

小説・めぐみ園の夏(2)

高杉良
執筆者:高杉良 2016年3月26日
エリア: 日本

GHQ占領下の当時、世の中は騒然としていたが……(C)時事

 

【前号までのあらすじ】

亮平の父、三郎は他所に女をつくり、家に金を入れずにいた。生活が困窮する中、伯母の早苗は子供たちを福祉施設に入れることを画策し、同時に伯父の保から多額の援助を引き出していた。ある日、三郎の元を訪れた保は、その振る舞いを激しく叱責し――。

 

第2章 母の情念

 

   1

 

 横内早苗(よこうちさなえ)の行動力は水際立っていた。妹の杉田百子(すぎたももこ)と杉田三郎の離婚を急がせ、昭和25年7月時点で百子を旧姓の深谷姓に戻したが、弘子(ひろこ、中2)、亮平(りょうへい、小6)、修二(しゅうじ、小2)、百枝(ももえ、3歳)の4人の子供たちには杉田姓を継承させた。このことは弘子と亮平が望んだことにもよるが、百子の再婚の可能性を早苗が考慮した結果である。

 早苗は1度だけ市川市の児童相談所に子供たちを連れて足を運んだ。

 千葉県二宮町にある児童養護施設の「めぐみ園」を子供たちの収容先として選んだのは、むろん早苗だ。所長の勧めもあった。めぐみ園しかなかったとも言える。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
高杉良
高杉良 1939(昭和14)年、東京生まれ。科学専門紙記者、編集長を経て1975年『虚構の城』で作家デビュー。以来、経済界全般にわたって材を得、綿密な取材によって徹底したリアリティにこだわった問題作、話題作を次々に発表している。主な作品に『小説 日本興業銀行』『労働貴族』『広報室沈黙す』『燃ゆるとき』『濁流』『金融腐蝕列島』『不撓不屈』『虚像』『第四権力』『小説ヤマト運輸』などがある。
comment:2
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
逆張りの思考
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
最新コメント
最新トピック
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順