再び「5日間で日本敗戦」シミュレーションを考える

執筆者:林吉永 2016年4月9日
エリア: アジア

 アメリカのランド研究所が行った日中戦争のシミュレーションでは、5日間で日本敗戦という結果となった(2016年2月13日「『日本は対中戦争5日で敗戦』――米ランド研究所シミュレーションの含意」参照)。これを笑って済ませることはできない。何故ならば、ランド研究所が、いい加減なデータを使ってシミュレートしたとは思えないからだ。戦争シミュレーションのような数学的、統計的と言われる分析(Operations Research:OR)には、例えば、戦争指導者の能力や資質といった定性的要素は考慮外である。

 ORには、実に複雑多岐の要素がインプットされるが、ここでは代表的な範囲に止めておきたい。彼我の軍事力の優劣を競うORに供する定量的データは、火器、艦艇、戦闘機、ミサイル、警戒監視センサーなど装備の相対的優劣を導く、有効射程、破壊力、速度、行動半径、探知距離、電子戦などの基本性能であり、さらに重要なのは、主としてそれら装備の保有数、稼働率、および、火器の命中精度である。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
林吉永(はやしよしなが) はやし・よしなが NPO国際地政学研究所理事、軍事史学者。1942年神奈川県生れ。65年防衛大卒、米国空軍大学留学、航空幕僚監部総務課長などを経て、航空自衛隊北部航空警戒管制団司令、第7航空団司令、幹部候補生学校長を歴任、退官後2007年まで防衛研究所戦史部長。日本戦略研究フォーラム常務理事を経て、2011年9月国際地政学研究所を発起設立。政府調査業務の執筆編集、シンポジウムの企画運営、海外研究所との協同セミナーの企画運営などを行っている。
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