小説・めぐみ園の夏

小説・めぐみ園の夏(3)

高杉良
執筆者:高杉良 2016年4月23日
エリア: 日本
GHQ占領下の当時、世の中は騒然としていたが……(C)時事

 

【前号までのあらすじ】

園児たちは理事長の息子、浩の悪さに困らされていた。亮平もすぐに目をつけられるが、脅しに屈せず自力で対抗する。そんな折、米軍キャンプからボクシンググローブを譲り受けることになった。浩に一泡吹かせるため、ボクシングの試合が計画され――。
 

第2章 母の情念(承前)

 

   5

 

 めぐみ園開設以来初めてのボクシング大会が催されたのは、昭和25年8月某日午後8時過ぎのことだ。場所は、礼拝堂兼幼稚園の講堂である。講堂の床の中央と四方には、赤、青、黄色の3色のペンキで描かれた大きな三重丸が描かれてあった。

 その円は幼稚園の遊戯用にしつらえられたもので、すべての円の中では中央の円がひと際大きく、直径2メートルほどあった。

 ボクシングは中央の円を囲んで、麻のロープで正方形を作り、4隅を4人の園児がちょっと輪からはみ出して持った、仮設のリングで行われた。

 小濱(おばま)理事長、園長、浩(こう)の親子3人をはじめ保母や従業員、小学六年生以上の園児はほとんどが見物した。

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執筆者プロフィール
高杉良
高杉良 1939(昭和14)年、東京生まれ。科学専門紙記者、編集長を経て1975年『虚構の城』で作家デビュー。以来、経済界全般にわたって材を得、綿密な取材によって徹底したリアリティにこだわった問題作、話題作を次々に発表している。主な作品に『小説 日本興業銀行』『労働貴族』『広報室沈黙す』『燃ゆるとき』『濁流』『金融腐蝕列島』『不撓不屈』『虚像』『第四権力』『小説ヤマト運輸』などがある。
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