初訪中に「1000人随行団」:豪ターンブル政権の危うい「親中」姿勢

村上政俊

 オーストラリアのターンブル首相は4月14日から15日にかけて、中国を訪問した。オーストラリアはG20のメンバーであることから、今年9月に中国・杭州で開催予定のG20サミットに出席見込みであるにもかかわらず、それから約5カ月前にわざわざ首相就任後初となる訪中を敢行。外交上、国際会議出席による相手国訪問と2国間訪問では、後者が格上とされることから、今回の訪中で中国重視を打ち出した。また、約1000人の企業関係者が随行し、同政権の経済重視の姿勢が示された格好だ。
 他方、昨年秋には、第2次世界大戦で日本軍が戦略的な爆撃を実施したダーウィン港の、中国企業への「租借」が決まったこともあり、安全保障上の不安が懸念される。 

オバマが激怒したダーウィン港99年「租借」 

 2015年11月、約10万平方キロメートル(韓国の国土面積に匹敵)もの牧場を所有するS・キッドマン社の中国企業への売却が却下された。牧場の一部は、世界最大の陸上射撃場で宇宙開発にも利用されているウーメラ立入制限区域に位置することから、安全保障を理由として「上海鵬欣集団」などによる買収は認められなかった。ニューサウスウェールズ州(州都シドニー)の送電網トランスグリッドの99年間の使用権入札でも、中国国有企業「国家電網」が競り負けた。
 これらと対照的に、中国企業による権益獲得を阻止できなかったのが、ダーウィン港関連の使用権だった。2015年10月、北部準州(Northern Territory)政府は、商業用港湾施設の99年間の使用権を、山東省に本拠を置く「嵐橋集団」に約5億豪ドルで与えた。創業者である葉成は、兪正声(中国共産党序列4位)が主席を務める中国人民政治協商会議全国委員会の委員で、ダーウィンへの投資は、習近平が打ち出している「一帯一路」の一環であるとしている。嵐橋の幹部には人民解放軍出身者がおり、豪有力シンクタンクの戦略政策研究所は、中国共産党のフロント企業だと分析している。
 同盟国である米国は、米中が激突する南シナ海を睨む南太平洋の要衝を、オーストラリアが中国に易々と明け渡してしまったことに激怒。オバマ米大統領は15年11月のマニラでのターンブル首相との首脳会談で、今後は事前相談するよう要求した。

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執筆者プロフィール
村上政俊
村上政俊 1983年7月7日、大阪市生まれ。現在、同志社大学嘱託講師、皇學館大学非常勤講師、桜美林大学客員研究員を務める。東京大学法学部政治コース卒業。2008年4月外務省入省。国際情報統括官組織第三国際情報官室、在中国大使館外交官補(北京大学国際関係学院留学)勤務で、中国情勢分析や日中韓首脳会議に携わる。12年12月~14年11月衆議院議員。中央大学大学院客員教授を経て現職。著書に『最後は孤立して自壊する中国 2017年習近平の中国 』(石平氏との共著、ワック)。
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