「トランプ発言」を正面から考える(下)「普通のアメリカ人」の心情の代弁

伊藤俊幸
執筆者:伊藤俊幸 2016年6月1日
エリア: 北米 日本

 当然だが、現実にアメリカを動かしているエスタブリッシュメントたちは、このこと(在日米軍はアジア太平洋地域の公共財=「『トランプ発言』を正面から考える(上)在日米軍経費の実態」を参照)を充分すぎるほどわかっている。だからトランプ氏が何をどう「放言」しようと、アメリカの国益を考えるならば、米軍の世界展開による国際的な平和と安定を維持する、という基本戦略は変わりようがないだろう。
 もしトランプ氏が大統領に就任すれば、直ちにNSC(国家安全保障会議)や国務省、国防総省からのブリーフィングを受けることになるだろうが、その時になって初めて、日米安保条約の真の意味を知ることになるはずだ。

普通のアメリカ人は極東のことをよく知らない

 ただやっかいなのは、こうしたトランプ氏の感覚は、普通のアメリカ国民も同じだ、ということだ。筆者は、15年前に在米日本大使館防衛駐在官としてワシントンDCに勤務した経験があるが、東海岸(east coast)における日本の存在感のなさを痛感したものである。多くの普通のアメリカ人は、日本が経済大国であることは知っていても、日本がアジア太平洋地域でどのような戦略環境にあるのか、などということは深く考えてはいないのだ。アメリカでは、国民の代表たる上院・下院議員は、関係各国と積極的な議員外交を行っているが、日本の国会議員との関係は、正直なところ活発とはいいがたい状況にある。

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執筆者プロフィール
伊藤俊幸
伊藤俊幸 元海将、金沢工業大学虎ノ門大学院教授、キヤノングローバル戦略研究所客員研究員。1958年生まれ。防衛大学校機械工学科卒業、筑波大学大学院地域研究科修了。潜水艦はやしお艦長、在米国防衛駐在官、第二潜水隊司令、海幕広報室長、海幕情報課長、情報本部情報官、海幕指揮通信情報部長、第二術科学校長、統合幕僚学校長を経て、海上自衛隊呉地方総監を最後に2015年8月退官。
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