北朝鮮の外交攻勢(中)各国で韓国との「つばぜりあい」

平井久志

 第7回党大会終了後の最初に外交舞台に登場したのは金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長だった。88歳という高齢のために、韓国などでは党大会での引退説も出たが、対外的な元首として党政治局常務委員に残った。そして、党大会が終わると、高齢にもかかわらずアフリカ訪問という遠路外交に出た。

金永南氏のアフリカ訪問

 金永南委員長は5月17日に経由地の北京に到着した。金永南委員長は北京国際空港から北朝鮮大使館に向かったが、注目されたのは中国側が提供した車に乗ったことだった。金永南委員長が単に北京を経由してアフリカに向かうのであれば、中国側が車両を提供するのは変だ。確認はされていないが、金永南委員長が同日、経由地の北京で中国側要人と会談した可能性は排除できない。それが同月末の李洙墉(リ・スヨン)党副委員長の訪中につながった可能性がある。
 金永南委員長は5月19日に赤道ギニアのマラボに到着し、翌20日に、独裁体制を続けアフリカ最長の政権となっているヌゲマ大統領の就任式に出席した。金永南委員長は19日にはニジェール、ブルンジ、モザンビークの首脳、20日にはチャド、ガボン、中央アフリカ、コンゴ共和国、ギニア、マリの6カ国の首脳とそれぞれ会談した。
 金永南委員長は21日にはヌゲマ大統領と会談した。朝鮮中央通信によれば、ヌゲマ大統領は金正恩(キム・ジョンウン)氏の党委員長就任に祝意を示し「両国の親善協力関係をさらに拡大発展させることは赤道ギニア政府の変わることのない立場だ」と述べた。ヌゲマ大統領は21日、金永南委員長のための宴会も催した。金永南委員長は5月26日に帰国した。
 金正恩氏は第7回党大会でも非同盟運動の重要性を強調したが、北朝鮮にとってアフリカは外貨獲得や国連外交などにおいても重要な外交拠点だ。北朝鮮は、アフリカで各種記念館、銅像などの大型造形物、軍事施設などの建設や、軍や警察の訓練指導、医療団派遣など様々な活動を行っている。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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