朝鮮半島「次の一手」(下)危惧される夏の「軍事挑発」

執筆者:平井久志 2016年7月25日
エリア: 北米 アジア

 北朝鮮は7月9日午前11時半頃、咸鏡南道新浦南東沖の日本海で潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)ミサイルの発射実験を行った。水中から水上への発射には成功したが、高度10キロほどの地点で空中爆発した。北朝鮮は4月23日に新浦北東沖でSLBMを発射し、この時は約30キロ飛行した。今回の飛行距離は数キロで、前回の飛行距離より後退しており、韓国軍では実験は失敗だったとみている。
 北朝鮮は6月22日には中距離弾道ミサイル「ムスダン」(2500~4000キロ)の発射実験を行った。これは高度1413.6キロまで上がり、約400キロ前方の目的水域に着弾した。北朝鮮は「戦略兵器の今回の試射は、周辺国家の安全にいささかの影響も与えず、成功裏に行われた」と評価した。ムスダンは飛距離が長く、周辺国の安保に影響を与えないためにわざと高く撃ちあがるロフテッド軌道で発射実験を行ったとみられた。また大気圏外から再突入する実験も行った可能性がある。党機関紙「労働新聞」は6月23日に、金正恩(キム・ジョンウン)党委員長の指導のもとで「地対地中長距離戦略弾道ロケット『火星10』の試射」を行い成功したと報じ、ムスダンの北朝鮮での呼称が「火星10」と判明した。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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