小説・めぐみ園の夏

小説・めぐみ園の夏(9)

高杉良
執筆者:高杉良 2016年7月23日
エリア: 日本
GHQ占領下の当時、世の中は騒然としていたが……(C)時事

 

【前号までのあらすじ】

亮平は、浩の暴力への怒りが治まらず、高井と園田へ相談を持ちかける。2人は浩の非道さを認めつつ亮平を宥めるが、気持ちは治まらない。そこで高井が、クリスマス・イブにキャンプからプレゼントがもらえる話をすると、亮平は一転興味を示して――。

 

第4章 クリスマス・プレゼント

 

   1

 

 昭和25年12月上旬に、めぐみ園にコーラス部が結成された。結成は大袈裟だが、小学5年生以上の園児は全員参加、つまり否応なしに強制されたことになる。

 園児は讃美歌で鍛えられているとはいえ、音痴もいれば、変声期の男子もいる。調和が取れるのだろうかと、杉田亮平は気を揉んだ。

 亮平ならずとも怪しんで当然だが、なんとかさまになったから不思議である。部長兼指揮者である小林節子の熱意が、コーラスらしきものにしたと言うべきかもしれない。

 保母の中でも若くて、丸顔の可愛い感じの美人で明るい小林先生に求心力があるのは当然だ。小林先生はオルガンも上手に弾く。ほとんど譜面を見なかった。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
高杉良
高杉良 1939(昭和14)年、東京生まれ。科学専門紙記者、編集長を経て1975年『虚構の城』で作家デビュー。以来、経済界全般にわたって材を得、綿密な取材によって徹底したリアリティにこだわった問題作、話題作を次々に発表している。主な作品に『小説 日本興業銀行』『労働貴族』『広報室沈黙す』『燃ゆるとき』『濁流』『金融腐蝕列島』『不撓不屈』『虚像』『第四権力』『小説ヤマト運輸』などがある。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
逆張りの思考
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
最新コメント
最新トピック
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順